講演概要


原始星連星 L1551NE における渦状腕と質量降着流
松本 倫明 (法政大学)
原始星連星 L1551NE を ALMA Cycle 0 によって観測を行った。ダスト連続波と C18O 輝線の結果は、連星円盤からの質量降着と渦状腕の存在を示唆する。この観測と平行して高精度AMRシミュレーションと輻射輸送可視化を行い、観測結果を比較した。その結果、観測された特徴は連星質量降着モデルに特徴的なものであり、渦状腕によるガスの運動とそれに付随する質量降着を力学的に説明する。

Pop III binary population synthesis
衣川 智弥 (京都大学)
現在、世界初の重力波観測を目指し、KAGRAと いった重力波観測計画が動き出している。これら重力波観測のメインターゲットになっ ているのはコンパクト連星合体である。本研究では初代星起源のコンパクト連星に着 目し、初代星起源の連星進化を考え、binary population synthesisにより初代星起 源のコンパクト連星の特徴及び次世代の観測計画での観測可能性について研究を行っ た。

近接連星の軌道決定に対する統計的手法
山田 慧生(弘前大学)
X線やガンマ線連星の伴星の正体は、中性子星なのかブラックホールなのか、未だ確定するに至っていない。 この正体をつきとめるには連星の軌道要素決定が重要な鍵となる。JASMINE計画は観測対象天体を多数回にわ たり観測可能な利点があり、S/N比の低い場合でも多くの観測データを得る事が期待できる。そこで、我々は JASMINEによる観測を鑑み統計的に多数の観測データを用いる事で位置天文的連星、特に、S/N 比の低い近接 連星の軌道要素を決定する手法を考案した。また、各観測データの時刻情報を考慮する事で決定精度をより 向上できる可能性についても議論する。 参考文献:H.Iwama, H.Asada, & K.Yamada, PASJ 65, 2 (2013); K.Yamada, H.Asada, M.Yamaguchi, & N.Gouda, in prep

分光連星系の星周に付随する巨大ガス惑星の探査
加藤 則行(ライフパーク倉敷科学センター)
連星系の恒星周りに付随する太陽系外惑星を星周惑星という。発見された星周惑星は、 これまでに80個程度あるが、すべて連星間距離が20AU以上の連星系に付随する。連星間距離が 20AU未満の連星系では、探査総数が100個程度と少ないため、星周惑星はまだ未発見である。 そこで連星間距離が10AU以下の分光連星系に対して、その星周に付随する巨大ガス惑星を 探査した。岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡と高分散分光器HIDESを用いて、9年間にわたり 100天体の視線速度をモニターした。その結果、連星間距離が2.052AUの分光連星系について、 連星系の公転運動以外に起因する視線速度が24.685日の周期で変動していることを確認した。 この視線速度は、主星の周りを公転する第3体が作り出していると考えられる。もし、この第3体の 質量が13木星質量以下ならば、連星間距離が20AU未満の連星系で初めて発見された星周惑星となる。 本講演では、この星周惑星の形成過程について議論する。

近傍Ia型超新星の早期観測で迫る連星系の正体
山中 雅之(京都大学花山天文台)
Ia型超新星は、一般に減光率と絶対光度に強い相関関係を持ち、 宇宙の標準光源として重要な役割を持つ。しかしながら、その爆発起源 天体は白色矮星と考えられているが、伴星からの質量降着か、合体か 未だに決着がついていない。近年、従来のIa型超新星には見られない ような特異な特徴を示す超新星爆発が確認されつつある・。本発表では 我々の国内連携グループによる最新の成果を示しつつ、Ia型超新星の 多様性を紹介する。

連星系中の超新星爆発が伴星に与える影響
平井 遼介(早稲田大学)
超新星爆発を起こすような大質量星の大半は連星系を組んでいるということが近年の観測から知られている。そのため、超新星爆発は連星系内で起きている可能性が高い。連星系内での超新星爆発が伴星のその後の進化に影響を与えたり、伴星の存在が超新星の見え方を変えたりすることも考えられる。本研究では、連星系内の超新星爆発によって伴星の外層がどれほど剥ぎ取れるかと、そのパラメータ依存性について議論する。

X線連星における降着円盤の歳差運動
井上 一(JAXA宇宙科学研究所)
X線連星でのいくつかの観測事実を説明する仮説として、相手の星からの潮汐力によってX線星まわりの降着円盤が歳差運動をしている可能性について、理論的考察を行う。

磁場強度から見る中性子星と恒星との連星系
笹野 理(東京大学)
一般的に低質量星と連星をなす中性子星は弱磁場をもち、高質量星との場合には強磁場をもつと考えられている。しかし、X線の観測による磁場強度の測定から、強磁場をもっていながら低質量星と連星を組むものも見つかってきている。これらの観測結果をもとに中性子星と恒星との連星系を考える。

白色矮星連星の合体とIa型超新星
佐藤 裕史(東京大学)
白色矮星連星の合体は、CO白色矮星がIa型超新星爆発に至る進化経路の1つの候補と考えられている。しかし、どのような白色矮星連星がIa型超新星の親星となりうるかについては、未だ議論が続いている。超新星爆発に至る白色矮星連星の条件は、Ia型超新星の発生率やDelay time distributionの理論的な研究にとって重要であるし、銀河の化学進化にも関連してくる。本発表では、現在までの白色矮星連星の合体とIa型超新星に対する研究を簡単に紹介するとともに、SPHシミュレーションによるCO白色矮星同士の合体計算の結果を示し、超新星爆発に至る可能性について議論する。

銀河考古学における連星の役割
小宮 悠(国立天文台)
金属欠乏星は宇宙初期に生まれた星の生き残りと考えられており、金属欠乏星を用いた初期宇宙や銀河形成の研究は銀河考古学あるいは近傍宇宙論と呼ばれている。金属欠乏星には炭素過剰な星が多いことが知られているが、炭素過剰星は連星質量輸送をうけたと推測されることから、金属欠乏星はその多くが、連星であったと考えられる。近年では、宇宙最初の星である種族III星も連星で生まれた可能性が指摘されている。本講演では、連星の寄与を考慮した、初期宇宙の化学進化と初代星の形成史についての計算に基づき、連星の伴星として生まれた種族III星が近傍宇宙で観測できる可能性を議論する。

高エネルギー粒子を考慮した降着流
木村 成生(大阪大学)
ブラックホール連星系において非熱的放射が卓越するハード状態は、輻射非効率降着流(RIAF)が存在していると考えられている。RIAF中ではプラズマは高温・希薄となり無衝突系となるため、磁気再結合などにより非熱的粒子を生成する可能性がある。本研究ではそのような非熱的粒子が降着流に与える影響について議論する。

球状星団における力学的連星形成
谷川 衝(理化学研究所)
球状星団では、星が高密度に分布しているため、力学的に連星が形成される。形成される連星の主体となるのは、ブラックホール、中性子星、白色矮星のようなコンパクト天体からなる連星である。これらの天体2つからなるコンパクト連星が合体すると、重力波源、ガンマ線バースト、超新星爆発など様々な突発天体として観測されるはずである。我々はコンパクト連星の形成過程をN体シミュレーションで追った。本発表では球状星団起源のコンパクト連星の合体率を示す。

SiO maser observations toward the symbiotic star R Aquarii with VERA - Determination of orbital parameters
MIN Cheulhong(総合研究大学院大学/水沢VLBI観測所)
Symbiotic stars are now generally understood as binary systems comprising a cool late-type star and a hot compact companion. Interacting between the components presents an exciting laboratory for studying variety of physical processes, and their study gives important implications for the binary evolution. R Aquarii (R Aqr) is one of the closest and most studied symbiotic star, but its orbital parameters are still under debated. In order to extract the orbital parameters, we have been observing the R Aqr system of the SiO maser with the VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry) which can allows us to conduct precise astrometry of the maser sources. Here, I will report the observational results of the accurate parallax measurement and the preliminary orbital parameters for R Aqr system. Also, I want to discuss the nature of the hot component.

大質量星と中性子星からなる近接連星系の進化
鴈野 重之(九州産業大学)
大質量星(MS)と中性子星(NS)の近接連星系では,MSが進化することにより, MS外層にNSが入り込む共通外層進化段階に入る. 共通外層進化段階に入ると連星の軌道運動エネルギーがMS外層に輸送され, 外層の束縛エネルギーと軌道運動エネルギーの兼ね合いによって,MSコアとNS からなる連星系となるか,MSコアとNSが衝突すると考えられてきた. しかし,共通外層進化段階でNSへの質量降着率が上昇すると,磁気駆動ジェットが 放出され,ジェットからのエネルギー注入により,外層全体を吹き飛ばす可能性や, ジェット中でのr過程元素合成の可能性が近年になって指摘されている. また,ニュートリノ冷却による高いNSへの高い降着率は,ブラックホール(BH)への 重力崩壊を引き起こすかもしれない. 一方で,軌道周期の短いNS=NS連星系が存在することから,少なくとも一部のNSは, 共通外層進化の際にBHへ潰れることなくMSコア付近まで軌道を縮める必要がある. このように,解明すべき点が多々残っているMS=NS連星系での共通外層進化について, 課題を議論する.

楕円軌道連星周りの周連星系円盤の長時間進化
今枝 佑輔(東京工業大学)
楕円軌道を周る連星系周りに存在する周連星系円盤の長時間進化について発表する。恒星の多くは連星であり、誕生時にガス円盤を伴って誕生すると考えられる。ガス円盤と連星は何百何千ダイナミカル時間にもわたって潮汐相互作用をするが、連星が楕円軌道を周っているとき、この長時間の相互作用の永年効果によりガス円盤中にm=1の密度構造が形成されうることを紹介する。またこれにより、ガス円盤自体も円盤パラメータや連星軌道要素によっては大きく楕円軌道化する可能性があることを検討する。

Be星と大質量白色矮星との連星系で発生した新星爆発
森井 幹雄(理化学研究所)
MAXIが発見した軟X線突発天体 MAXI J0158-744について紹介する。 これは、珍しい白色矮星とBe星との連星系で発生した初めての新星爆発である。 新星爆発点火直後に非常に明るく、ネオン輝線が検出され、また非常に早く減光したため、 大質量のO-Ne-Mg白色矮星であると考えられる。

BH-NS 連星合体
川口 恭平(京都大学)
ブラックホール中性子星連星合体によって形成される降着円盤や放出される物質 は、現在ショートガンマ線バーストやKilonova/Macronovaを引き起こす源になる と考えられている。こうしたショートガンマ線バーストやKilonova/Macronovaの 輝度や継続時間は降着円盤や放出される物質の質量に依存する。本発表では、ブ ラックホール中性子星連星合体によって形成される降着円盤や放出される物質の 質量が、ブラックホール質量、スピンの大きさと方向、中性子星の状態方程式に どのように依存するかを数値相対論シミュレーションの結果をもとに議論する。

Temporal Evolution of Dust Emission observed around the Binary Merger V1309 Sco
左近 樹(東京大学)
我々は、Binary Merger V1309 Scoの2008年9月の発見以降、Gemini/T-ReCSを用 いて、660日及び1360日の観測を行い、赤外放射の時間進化を捉える事に成功した。V1309 Scoは、初めてBinary Mergerとして認知された天体であり、本研究では星周ダストの起源と mergingによる影響/因果関係を調べる。

連星白色矮星をめぐる何か
藤澤 幸太郎(東京大学)
白色矮星のうちいくつかのものは,観測可能な強さの磁場を伴っている. この磁場の強さや回転などといった星の基本的な物理量は, 単星強磁場白色矮星と連星強磁場白色矮星でその傾向が異なっている. よって,磁場や回転といった星の基本的な物理量の起源や連星の進化を考える上で, これら白色矮星連星は非常に興味深いかもしれない. そこで本講演では,これら連星白色矮星をめぐる何かを概観していく.